Muranaka Diary2000-2017

muranaka Live 2006

  [旅人]

ありあまる情報の波打ち際で
人は今、行ったり来たりしている。
本当は自分達とは何の関係もない
情報や映像の波にもまれ
人々は幸福になったり、不幸になったりしている。

うまく波乗りできる人もいれば
今にも溺れかけそうになっている人もいる。

人生の価値というものが限りなく多様化している
この時代の波を
それでも人々は案外うまく
泳ぎきろうとしているように思えるし
ある日あっけなく溺れてしまうようにも見える。

けれど、今のぼくはRIBBONS号という船暮らし。
船で旅をするようになって自分には関係ない情報には
まるで興味がなくなってしまった。
今のぼくに気がかりなのはその日の天気と
ぼくの船の生活がつつがない日々であること
そして海がいつまでも平穏無事であることだけだ。

誰の暮らし方が正しくて、誰のそれが良くないとか
誰の考え方が進んでいて、誰のそれが遅れているとか
ぼくには言えなくなってしまった。

いろんな旅があり、いろんな環境があるように
人それぞれにいろんな価値観があり、いろんな人生がある。
・・・・・・・・それでいい。

自分の眼で見たこと
自分の耳で聞いたこと
自分の体で感じたことしかぼくにはわからない
自分が直接体験しないことを、ぼくはいつのまにか
信じなくなってしまった。

そして自分だけが何でも知ってるような顔をして
「人生や社会のルールなんてこんなものだよ」と
偉そうなことを言う人が大嫌いになってしまった・・・・

数字や情報や映像は全てただの記号であり
それ以上のものでもそれ以下のものでもない。

指で触ってみて匂いを嗅いで、かじってみれば
青いレモンのすっぱさを人々はたちどころに
理解することができるだろう。
自分の人生がどんなものかを知りたければ
人は自分の人生を生きてみるしかないとぼくは思う。

一生を生まれ育った土地で暮らす人もいれば
一生を旅で暮らす人もいる。
街の生活よりも海や船の暮らしのほうが
人間的だ、幸福だってことは他人には言えない。

本当のことを言えば
人は誰だって自分が生きたいと思っている人生を
生きているにすぎない。
人は誰でも自分が想像できない人生を生きていくことは
実はない。

好きになった土地で好きになった人々や恋人と
一緒に好きな暮らしをすることを人生という。
そして、自分の目と心と体でそのことを確かめに行く為に
旅がある。
そして、こだわりのない心で自分自身の人生を旅し続けて
いる者をなぜか人々は・・・・・・・旅人という。