錆びのあるネックレス
ぼくは男ばかりの3人兄弟の真ん中。子供の頃は兄と弟と
仲良しこよしで夕暮れまで遊んでいました。
懐かしい思い出と楽しい思い出ばかりです。
でも、たまにはケンカもしました。でもケンカになっても
別々な行動は出来ません。それには訳がありました。それは「鍵」です!
そう、家の中に入る「錆びた鍵」を兄が首から1個ぶら下げて
いるんです。だから3人はいつも仲良くバラバラに
ならずにいれたのです。”鍵っこ”の尊い絆・・・・・
親父とオフクロさんは屋台のようなラーメン屋を
していて、ぼくたち兄弟は「おい!ラーメン屋のガキども!」
「ネギ臭い!ニンニク臭いぞ!あっちに行けよ!!」などと
いつも言われていましたが、いじけずに兄が首からぶら下げて
いる鍵を頼りに家に逃げ込むことはよくありました。
夕方、暗くなる頃は3人で勉強したり、一番頭の悪いぼくは
兄に宿題を教えてもらったりして親の帰りを待っていました。
親父とオフクロさんが帰って来ると「ごめん、ごめん」っていつも
謝っていた記憶があります。オフクロはすぐにご飯の支度、
親父は裏庭で家庭農園なナスやキュウリをもぎ取ってくれたり
して食材にしてくれました。家庭の味や、家族の絆はこんな
環境の中で作られました。
<<中略>>
兄と弟は親の意思を継いで今は立派な実業家、それぞれの道を兄弟で歩んで
いますが今となればあの頃の鍵は多分、誰にも壊されない、世界にひとつしか無い
「錆びのあるネックレス」として、今でもぼくと同じく
兄や弟の心の中で輝き続けているかと思います。