第五章 【リボンズ.セレクションの誕生】
ここで気がついたことは「安さ」だけでは客は動かないものであるということ。
お客様は自分に合う美容室よりも自分に似合うヘアスタイルを作ってくれる美容師を探している
ということである。
立て続けに予約が埋まり、学校での講義から帰ると2時間の間に10人もの新しいお客様が
待っていて下さるという状態が続いた。
ジェイコムの番組スタッフの皆さん達には本当に感謝している。
そんな3足の草鞋を履いて走り続けていた頃、RIBBONS中央店が入居しているビルが転売され
新しいオーナーになったという。
当然ビル名も変わるので名刺からゴム印、あらゆるモノに名前を変更しなければならない。
しかも家賃が上がる・・・と聞いた。
情報が無いのでかなり戸惑った。
しかし家賃が上がるならビルを出なければならない状況。近くで同じ規模の店を探し始めた。
移転を考えていたのだ。
そんな時、狸小路4丁目に知人が店を売却するというので二束三文で譲ってもらうことに
なった。
そのときはそれしか考えられなかった。やはり必死だった。そして家主さんと契約。
ところが、しかしである。 中央店の入っているビルは家賃の値上げをするどころか管理費が下がってしまったのだ。
新しく移転しようと考えていた矢先に今度はとてつもなく大きな壁にぶち当たる。
狸小路の店を解約するかどうするかの決断をしなければならない。
しかし、時すでに遅く知人の迷惑を考えてそのまま契約することになった。
この経済状況の中で中心街に二つの店を構えるって・・・ウソだろう!?
軌道にも乗ってない店が支店? これはどう考えてもあり得ない。
実はRIBBONS.selectionの誕生の陰にはこんな理由もあったのだった。
とった対策は、ぼくと中の島店から統括店長の出村を呼び二人でセレクションを、
中央店は藤田を先頭に他スタッフが数名で始めた。 偶然だが、自分の誕生日がオープンとなった。
これでぼくは、三足の草鞋に足枷をつけられた四足の草鞋を履く身となっていった。
当然、中央店のお客さまはぼくについてセレクションに移動、出村のお客さまも移動となるので
中央店とセレクションの綱引きが始まる・・・・想像もできなかったことだ。
これは悪夢だ!
(続)
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