Muranaka Diary2000-2017

【9周年SP】今日までそして明日から

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第六章 【オレを許してくれ!】

綱引き・・・。
いわゆる客数を二等分する意味である。事実、新しいお客様を増やさなければならない。
同じ店同士がライバル店になるのだから相討ちに等しい。
さらに、とった対策は中の島店の一時閉鎖。中の島店は自分の家を美容室に改造した一戸建てだから
経費は街の中に比べるとそう多くはかからない。

これで三足の草鞋になり少しは身軽になるはずだ。
街の中のサロンに気持ちも集中させることが出来るが、
地域密着型のサロンで“あ・うん”の呼吸があるラフな店「中の島店」に通い続けてくれたお客様からは
「街中のサロンは敷居が高くていけない・・・」という言葉も聞かされた。

「そういうものか・・・」と初めて気がつき胸が熱くなってしまった。

オープンしたてのセレクションの名前を知ってもらいたい
そして1000分の一の確率を狙い街角でチラシの配布をまたおこなった。
しかし、手作りのチラシの配布は手間も時間もかかるわりには一部の人にしか行き渡らない。
口コミはお客様あってこそ成り立つものであり、毎日の課題となっていくものだ。

そこでクーポンマガジンの存在が頭をよぎった。
「料金に妥協・・・?」
そうではなく、
「多くの人にリボンズ中央とリボンズ・セレクションの名前を知ってもらいたい」

「それぞれのサロンのコンセプトに合うお客様が店を選び易いように
二つのサロンの雰囲気を少しでも知ってもらいたい」

広告の選択肢としての掲載を考え始めた。
でも掲載するためには料金をディスカウントしなければならない。
情報を集めた・・・。そしてクーポンマガジンをじっくり見た。
「安い!」 ここまで安くしなければならないのか!?
かなり戸惑いを感じながらスタッフの顔色を見た・・・。

ぼくやスタッフからしてみれば世界の川島文夫先生が付けてくれた名前のRIBBONSが? 
値下げ? 技術派で通ってきたRIBBONS。。
さまざまな葛藤を生じていた。そして黙って掲載・・・

その時、ぼくの気持ちの中で「オレを許してくれ!」と叫んでいた。
それは技術者としてのプライド、見栄もあったかと思う。
価値ある技術に相当する値段が当たり前だと思っていたから。
それが通用するのだと信じていた。

しかしぼくの気持ちとは裏腹に、時代は美容室の生き残りを求めていた。

とうとうクーポンマガジンの発行日がやってきた・・・
思った以上にお客様がおいでになった!
普段の倍も仕事量が増え活気が出てきた。 夢にまで見ていた事だが初めて椅子がお客様で一杯になった。
クーポン券をお持ちになるお客様は出村・藤田・島本・などトップのスタイリストら6人のスタッフが担当して喜ばれていた。
スタイリストとお客様の笑顔を横目にしていて、とても嬉しかった。
サロン選びで迷っているお客様は少しでも良い店の情報を欲しかったと聞いていたので
クーポン雑誌を見ることで、初めてのサロンに入りやすくなるという
ことも知った。

ぼく自身は美容学校の授業、ジェイコム番組を見て来て下さるお客様やご紹介で来て下さるお客様で十分だった。
そしてまた、ディスカウントを嫌うお客様がいたことも事実だ。

得るものがあれば失うものもある。数学的に言えばプラスマイナス=ゼロという答えになる。
それでもお客様が喜び、技術者にも遣り甲斐があるのだからプラスかもしれない。。。

またさまざまな戸惑いや疑問の中で離れていく若手スタッフもいた。
忙しくなったから辞める・・・
考え方の相違を感じるから辞める・・・

オレを許してくれ! 
「技術者」と「経営者」・・・もし、自分が二人いればどんなに楽な道のりなことか・・・

(続)

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