Muranaka Diary

2020.12.22

オフクロよ

昨日のことだけど、

オフクロさんがカットと髪を染めに来た。

90歳にもなるのだろうけど、お洒落は

女の命なのだろう。

マジマジ見たオフクロさんは背が丸まり、

小さくなってしまった。

誰かが入って来たかなぁ、と思うと

すでに椅子に座っていた。

夜食の玄米ご飯をご馳走になった。

しかし、

最近のオフクロさんは両膝が良くない。

だんだんと歩けなくなるんだなぁ。。

家の中でも痛くて横になってる事が多い。

ボケない分、歩けない。

 

「あんた、今年もお正月いないのかい?」

 

突然そう言う。。

 

「うーん、、、 」

 

沈黙が続く…。

 

「人生ってプラス、マイナスは0だわ〜。」

はあ?

「商売してもプラスがあっても終わりはゼロ…。」

「生きていて楽しい事もあれば、それ以上に辛い

事もある。」だと言う。

この意味はとても深い。。

そして何となくオフクロが言いたい事は

息子のオレは感じた。

 

そうこう話したかと思えば、

そうしたら、突然、

芸能界の話をし始めた。。

 

高倉健さんの秘話を教えてくれた。

黙って聞いて仕事を進めて行くと、

オフクロの芸能人話しが続く…。

 

「福山さんや大泉さんは最近テレビに出てるねぇ」

「福山さんは元気なのかい?」

 

そうか、オフクロは若い頃の福山さんを

よく知っている。

サザンの桑田さんも知っている、けど、

サザンオールスターズっていうのが分からない。

まだオフクロがラーメン屋に立っていた頃から

知っている。。

そして大きな芸能事務所の会長まで親しい仲だ。

ふと、そんなオフクロの後ろ姿を見ていると

何故か、遠くに行く人に感じて仕方がない。

父が旅立つときと、同じ背中なのだ。

父との別れは「明日から入院して腰の手術するから」

と、髪を切りに来た、、、その時は反対したのだけど、

そのまま逝ってしまった。。

 

理美容師の職業とは人の背後に立つ仕事だけに

その人の人生の様が何となくわかるものだ。

悲しい後ろ姿、楽しい姿、緊張している姿、

ちょっと遠慮気味な姿、

とても幸せな姿や笑顔と、ちょっとだけ迷子に

なっている人の顔や姿は不思議と

伝わってくるのだ。

オフクロは何となく遠くに旅立つ人に

感じてしょうがない。。

 

2時間ほどで終わり、

「いくらさ?」

いや、オフクロよ、いらね〜よ、

「いいから、いいから…。」

いや、元気でコロナに負けないで100まで

生きて欲しいよ。。

 

「ここに置いて行くから、体に気をつけなさいや〜」

「お釣りはいらないから…」

 

 

と、フツーの親子の会話。。

 

玄関から見送り、「滑るなよ〜」

 

頭からほっかぶりしてまた背中を丸くして

杖をついて寂しそうに帰っていく。。

 

サロンに戻り釣り銭の受け皿をみると、

 

1000円! ウソ〜ぉ!

 

あ〜野口さま。。

 

オレのオフクロはやっぱりタダものじゃないわぁ〜

眼も悪くなったようだ…。

 

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